▽斉島明
1. 揺らぐ境目 象の鼻テラスの 3面の外壁を兼ねる大きなガラス窓からは、象の鼻パークとその向こうの横浜港が広く見わたせる。Theater ZOU-NO-HANA vol.5『象はすべてを忘れない』(柴幸男(ままごと)演出、以下『象』)は 11月一杯の公開稽古を経て、12月…
官能をはたらかせて演劇を観た経験が、実はあまりない。悪い癖だとは思いながら、提示されるそれの表象するもの、意味を示す記号、言葉をつい追いかけてしまい勝ちになる。記号に変換できないもの、たとえば気配や嗅覚、あるいは味覚のほうにこそ、じつはひ…
いちどきに与えることができる注目の総量は、とても限られている。例えば舞台上でスポット照明が落とされるのは観客の限りある注目をそこへ集めるためだし、また例えば観客が同じ上演に何度も足を運ぶ理由のひとつは、前回見逃した対象にあらためて注目して…