Perfoming Arts Critics 2013

若手の書き手によるレビューブログです。2013年11月から12月に上演される舞台芸術作品についての批評を中心に掲載していきます。

▼中野成樹、長島確

恐ろしいこと満載の人生 –北千住の恋人–

『四家の怪談』は、北千住界隈をめぐるツアーパフォーマンス形式の演劇であると聞いていた。スタート地点となる集合場所のホールに行くと、友人のH嬢に会った。F/Tの会期中は彼女によく会う。 作・演出の中野成樹は、海外作品の大胆な翻案「誤意訳」で知られ…

注目のゆくえ

いちどきに与えることができる注目の総量は、とても限られている。例えば舞台上でスポット照明が落とされるのは観客の限りある注目をそこへ集めるためだし、また例えば観客が同じ上演に何度も足を運ぶ理由のひとつは、前回見逃した対象にあらためて注目して…

交差点を具現化した演劇

フェスティバル/トーキョーの会期が始まるより前、『四家の怪談』チケット早期購入者特典として、今回の公演の台本となる小説が郵送されてきた。「東海道四谷怪談」をもとに中野成樹が書き下ろした創作民話だという。 以下、簡単なあらすじである。足立区五…

観客は観劇を体験することができない

ツアーパフォーマンス、もとい、ツアー。中野成樹と長島確により制作された『四谷雑談集』そして『四家の怪談』は、『四谷怪談』を題材に、都内のとあるエリアを散策することをメインとしている。このツアーにはそれぞれお供となる「台本」が一冊ずつ用意さ…

物語を通して表象された、舞台としての「東京」

『四家の怪談』は演出家の中野成樹が現代版四谷怪談として書いた小説を手に、舞台となった北千住、五反野を探索する作品である。上演は「トーク」と「ウォーク」から構成される。指定された集合場所に着くと『四家の怪談』の物語が書かれた冊子と、舞台とな…

ツアーパフォーマンス試論

0.はじめに 中野成樹+長島確によるツアーパフォーマンス『四谷雑談集』『四家の怪談』はその巡る先々に基本的には何も用意されていないという点に他の多くのツアーパフォーマンスとの違いがある。中野+長島による明白な仕掛けとして用意されているのはツ…